大人気SF戦記ファンタジー銀河英雄伝説で、舞台の一つである銀河帝国。宇宙一の大国の中には、獅子身中の虫がいました。
それが、皇室との血縁がある門閥貴族です。
門閥貴族らは、自身の出自を盾に特権を与えられた大貴族であり、そのせいで政府や帝国軍の秩序は乱れていました。ただ、帝国軍でラインハルトたちが台頭してきてからは軍の統制は安定していきました。
しかし、ラインハルトは貧乏貴族の出身であり、門閥貴族としては面白くないらしく度々邪魔をしていました。
そんな門閥貴族とラインハルトが直接戦った戦争こそ、今回ご紹介するリップシュタット戦役です。
この戦争によってこれからの銀河帝国の支配者が決まるだけに、双方の動員戦力は相当なものです。
そして、この戦争に勝ったラインハルトは軍事と政治を掌握し“ローエングラム独裁体制”を確立していくのですが、どうしてそのようになったのかも戦後処理と共にもて行きましょう。
※この記事では銀河帝国の内乱を紹介していますので、敵国である自由惑星同盟にはあまり触れません。
リップシュタット貴族連合の中心人物
リップシュタット貴族連合(以下、門閥貴族連合)を立ち上げる上で、中心となったのが門閥貴族を束ねていた2人の大貴族
- 盟主:オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク
(ブラウンシュヴァイク公) - 副盟主:ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世
(リッテンハイム侯)
この2家の門閥貴族は、次期皇帝争いで対立していましたが、帝国宰相リヒテンラーデ侯が推す皇帝の孫が皇帝に即位したことで自身の権力が無くなると考え、共闘して反乱を起こしたんです。
ただ、この反乱では元々勝てないと分かっていて参加している軍人もいました。
その代表格が軍事の総司令官を務めるメルカッツ上級大将。
そして、消極的ながらも最後まで傍で使えたのがアンスバッハ准将。
しかし、大多数の門閥貴族は勝てると信じて戦っていました。
そんな彼らを率いて積極的に戦ったのが、ブラウンシュヴァイク公の甥フレーゲル男爵ら青年貴族たち。
そうして戦った門閥貴族や軍人ですが敗色濃厚になると中立地フェザーンや敵国の自由惑星同盟などに逃亡していきました。
リップシュタット戦役のきっかけ
リップシュタット戦役の直接的な原因は、皇帝の崩御に伴う次期皇帝争い。
ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム侯は、外戚として権力を掌握すべく自身の孫を推挙しましたが、門閥貴族の台頭を嫌う国務尚書県帝国宰相リヒテンラーデン公が、宰相の地位と玉璽を握り宇宙艦隊司令長官ローエングラム侯ラインハルトの協力を得て、皇帝の孫エルウィン・ヨーゼフ2世を即位させました。
これによって門閥貴族の権力は一気に低下して、ラインハルトの権力が高まることになります。
この一連の動きに激怒した門閥貴族3740名がリップシュタットの森で集まり、反ローエングラム・リヒテンラーデン侯連合(リップシュタット貴族連合)を結成。
ガイエスブルク要塞を占拠して辺境などで反乱を起こしました。
この内乱に先立って、マーリンドルフ家などの一部貴族がラインハルト陣営に忠誠を誓い、帝国中が二分する形になっています。
リップシュタット戦役の戦闘
宇宙暦797年4月のラインハルト邸襲撃未遂事件をきっかけに、貴族連合と帝国政府との戦闘が始まりました。
この襲撃事件は、艦隊決戦では勝てないと踏んだアントン・フェルナーら軍人が独断で暗殺しようと動いた物でしたが、それが失敗したことでアントンは降伏して参謀長オーベルシュタインに仕えます。
貴族連合を討伐するために、ラインハルトはまず軍事の全権を掌握するために軍務尚書らを拘束し解任。全権を掌握したことで帝国軍最高司令官に任命されました。
その上で、貴族連合を“賊軍”として討伐の勅命を出させました。
自分たちが賊軍となったことに起こった貴族連合側は、総司令官メルカッツ提督の作戦を変更して、1万6千隻での首都強襲案を決行。
その部隊の指揮官は、作戦を立案したシュターデン提督。そして、彼に賛同した青年貴族の一部も同行しました。
しかし、この作戦は数で劣るミッターマイヤー艦隊が機雷原を用いた作戦で強襲艦隊を全滅させています。
これによって、貴族連合の攻勢はなくなりラインハルト陣営による殲滅戦に変わっていきます。
貴族側のレンテンベルク要塞を落とした際には、司令官オフレッサーの身を帰還させる工作を用いてオフレッサーを粛清させ内部不和を起こさせました。
7月に入ると、副盟主リッテンハイム侯が率いる勢力とキルヒアイス提督率いる艦隊の戦闘が始まります。(キフォイザー星域の会戦)
この会戦で、キルヒアイス艦隊に惨敗したリッテンハイム艦隊は、壊滅しながらも後続の補給艦隊を攻撃してガルミッシュ要塞へ逃亡しました。
この行動に激怒した補給艦隊の士官が、救出された後にガルミッシュ要塞でリッテンハイム侯と共に爆死。残った貴族連合軍は降伏。
こうして辺境での反乱は平定されました。
その裏ではメルカッツ提督率いる貴族連合の大艦隊が勝利したものの、消耗を避けたミッターマイヤー艦隊が撤退して聖域を放棄しています。
そして、その後もラインハルト陣営は各地を平定。ついに貴族連合の本拠地ガイエスブルク要塞まで進攻してきました。
ラインハルトは、ガイエスブルク要塞の主力を誘い出すために決戦状を送りつけて挑発。
この挑発に乗った青年貴族らは、メルカッツ総司令の命令を無視して出撃。これに対してわざと敗走したラインハルト陣営を見て、メルカッツの指揮権は喪失し貴族連合の暴走が激しくなりました。
2度目の出撃では、盟主ブラウンシュヴァイク公も出撃しましたが、2度目ということもあってラインハルト艦隊は容赦なく攻勢に出て、ブラウンシュヴァイク公をあと一歩まで追い込みました。
この時は、メルカッツ艦隊が救援に来たことで双方撤退。
この敗戦で、貴族連合内部にも勝機がないと考える者が増え、逃亡や亡命する貴族や軍人が出てきました。
この流れを変えるために、フレーゲル男爵ら楽観貴族が出撃。しかし、案の定ラインハルトの術中にハマって敗退を続けて内部崩壊。
フレーゲル男爵は、貴族のプライドを理由に旗艦同士の一騎打ちを求めるも、誰もその求めに応じず。最後は部下の裏切りで暗殺されました。
そして、フレーゲル男爵と共に出撃していたメルカッツ提督は要塞編期間を阻まれて、自由惑星同盟への亡命を決意。
その後、ガイエスブルク要塞では側近のアンスバッハに促されてブラウンシュヴァイク公が自害。
こうしてリップシュタット戦役はラインハルトの勝利に終わりました。
戦後処理
戦後処理をするために、ラインハルトたちはガイエスブルク要塞に入りました。
そこでは、いやいやながら参加した軍人たちを自身の陣営に誘い、逆らう者を処分していきました。
そして最後に、ブラウンシュヴァイク公の遺体を連れてアンスバッハが登場。
アンスバッハは、主君の敵討ちをするために、拳銃をブラウンシュヴァイク公の近くに忍ばせていました。
最初こそキルヒアイスのおかげで暗殺を阻止できましたが、今度はその銃がキルヒアイスを貫いてしまい、そのまま命を落としてしまいました。
アンスバッハは取り押さえられるも自害してしまいます。
盟友キルヒアイスを失ったことで、ラインハルトは茫然自失で政務がストップしてしまいました。
しかし、参謀長オーベルシュタインはキルヒアイスの死を利用した権力掌握を計画し、ロイエンタールらを首都オーディンへ急行させました。
そして、キルヒアイス暗殺の首謀者として帝国宰相リヒテンラーデン侯を捕縛。自殺に追い込んでその地位をラインハルトに就かせました。
なおも引き籠っているラインハルトに対しては、姉アンネローゼに揚力してもらって政務に復帰させました。
こうして、帝国の軍事と政治の権力を掌握したラインハルトは“ローエングラム独裁体制”を確立しました。
おまけ:そのころ自由惑星同盟では
リップシュタット戦役中の自由惑星同盟は、ラインハルトとオーベルシュタインの工作で反政府勢力“救国軍事会議”がクーデターを起こしていました。
救国軍事会議の議長はヤン=ウェンリーの副官フレデリカの父ドワイト・グリーンヒル大将。エル・ファシルの元駐留部隊司令官リンチが工作員として動いていました。
最初こそ4つの惑星での反乱やクブルスリー大将襲撃からの首都制圧など、クーデターは成功と思われましたが、唯一クーデターに参加しなかった遠方部隊(イゼルローン要塞のヤン艦隊)が全力出撃。
救国軍事会議に属した第11艦隊や反乱地域を制して、首都防衛網を破壊。
最終的にクーデターのトップ二人の死によってクーデターは終了しました。
まとめ
銀河帝国を長年蝕んでいた門閥貴族と最近台頭してきた寵姫の弟。この2勢力の全面衝突となったリップシュタット戦役は銀河帝国を二分しました。
自由惑星同盟はクーデターを起こさせて動きを止めましたが、それでも大艦隊同士の戦争で多くの幹線と人員を失いました。
しかし、この結果ラインハルト=フォン=ローエングラム独裁体制が確立して能力主義の人事が行われて国力は増大。さらに貴族の権力や財力を削いで国民に還元したことで国内は安定していきました。
いっぽうで、リップシュタット戦役は門閥貴族残党とフェザーン自治領のつながりを強めて、結果的に銀河帝国ゴールデンバウム王朝を終わらせることになるのですが、それはまた別のお話。
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