大人気なろう系アニメ「薬屋のひとりごと」
このアニメでは、中国王朝風の世界が舞台で、その中でも後宮や花街といった〈女の園〉を中心に物語が進んでいきます。
後宮は、皇帝の所有物で公的な場。
花街は、都の重鎮のための私的な歓楽街。
日本の時代劇のイメージとしては、後宮は大奥、花街は吉原といった感じです。
花街はおおよそ間違いではありませんが、後宮=大奥は違います。
ということで今回は、中国史や韓流時代劇などでちょくちょく登場するけどよくわからない後宮について解説していきます。
アニメ「薬屋のひとりごと」での扱いに触れつつ、実在した中国王朝の後宮を紹介していきますので、教養としても役立つようになっていますので是非お読みください。
薬屋のひとりごとの後宮
まずは、アニメ「薬屋のひとりごと」での後宮の扱いを軽く紹介します。
薬屋のひとりごとでは、内廷全体が後宮とされている。
皇帝のプライベート空間であり、皇室の方々や側室(妃たち)が暮らしています。
そこで働くのは、2000人の女官と1000人の宦官。
先帝時代よりは縮小してはいるけど、それでもちょっとした街のようになっています。
男子禁制で、無許可での外出も禁じられているため、逃亡や侵入を防ぐために複数の城壁や門で囲まれて、兵士も常駐しています。
また、妃は上級妃を頂点として中級と下級の3段階の分かれています。
後宮の歴史と制度
まずは、後宮の歴史を紹介します。
ただ後宮の歴史は、分かっているだけで漢王朝の頃からの2000年以上続いているので、それを統べて書いてしまうと読みにくくなってしまうので、後宮制度が確立した唐王朝までの歴史を紹介します。
最初の中国王朝である殷王朝は、比較的伝説的な話が多く後宮という失火るとした枠組みがあったかは不明です。
妲己の悪行からして、後宮のような空間がかなりの広範囲あったことは推測されますが、推測の域を出ません。
その後に政権を握った周。この周王朝が、今後の中華王朝のお手本となる様々な制度を作ったのです。
しかし、ここでの後宮もそこまで確立した制度になっていなかったり分からなかったりします。
添えがはっきりするのが、キングダムでおなじみの秦帝国の後継国家である漢王朝です。
この漢王朝では、初めての皇后が誕生します。それが初代皇帝の劉備の正妻である呂后。
秦の始皇帝や二世皇帝に皇后がいなかった可能性があるため、実在が確定している皇后として呂后を紹介しました。
※呂后は初めての皇后だけでなく、皇太后(先代の皇后)や太皇太后(先々代の皇后)でもあり、皇太后による執政『臨朝称制』を初めて行った人物でもあります。
そして、前漢の全盛期である武帝の時代には、後宮改革も行われて妃の階級が14段階と定められます。
しかし、その一方で後宮ドリームと言える出世劇も度々起こっています。
例えば……
- 武帝の皇后「衛皇后」は歌妓出身
- 成帝の皇后「趙皇后」卑賤出身
しかし、その分政争は激しく、衛皇后は廃位となり自殺に追い込まれて、趙皇后も庶人となり自殺。
そうして政争に勝利したのが、前官を滅ぼした王莽です。
彼は、周王朝のことが書かれた「周礼」や「礼記」を元とした儒教国家への大転換を行い、
それは、後宮に王手も例外ではなく、教科書通りの改革を行います。
後宮の階級制度
- 皇后
- 3人の妃
- 9人の嬪
- 27人の美人
- 81人の御人
120人体制
しかし、これは王莽政権の崩壊とともに終わり、後漢時代に大きく手が加えられました。
後漢時代の後宮
- 皇后
- 貴人
- 美人
- 宮人
- 采女
貴人は、功臣の娘のうち皇后候補のみがなれる最高位の上級妃。
建国初期にはかなり有力な一手でしたが、結果的には外戚の力を強めることになりました。
それに対して、権力を失った皇帝が宦官を利用して外戚排除を企てると、外戚VS宦官の構図が出来上がり、最終的に三国志の時代に突入していくことになりました。
この三国時代を含むいわゆる魏晋南北朝時代を紹介するには王朝の数が多いので割愛。
また、隋王朝は短命だったので資料が少ないので割愛。
そしてついに楊貴妃がいる唐王朝が成立しました。
この段階で、その後の王朝でも続く後宮制度が完成しました。
各王朝で手を加えたりはしましたが、大元はこの唐王朝の後宮制度です。
また、アニメ「薬屋のひとりごと」のモデルの国でもあります。
ただ、王莽が作った後宮制度にちょっとだけ手を加えただけですが。
唐の後宮制度
内官(妃たち)
- 四妃(貴妃・淑妃・徳妃・賢妃)
- 九嬪
- 27人の美人
- 81人の御人
※美人以下はかなり簡略化しています
宮官(女官)
- 六尚
- 二十四司
258人
この制度は、あくまで妃や正社員の女官のみで、宦官や公有奴隷の下女などは数に含まれていません。
また、こうした唐王朝の諸制度は明文化されて、後の王朝の模範となりました。
しかし、その一方で傾国の美女「楊貴妃」や唯一の女帝「武則天」が出てくるなど、後宮の力が強い王朝でもありました。
楊貴妃以降の時代では徐々に衰退していき、ついには滅亡してしまいました。
まとめ
今回は後宮の基礎知識をメインとした記事でしたが、好評でしたら後宮について詳しく書いていこうと考えています。
当ブログでは、アニメ情報やアニメに関連した豆知識を紹介していますので、ぜひ他の記事も読んでください。